今日から連休だ。一年前は祐一さん達の家に泊まったけど、今回は私の家に泊まりに来る。 といっても、来るのは真琴と名雪さんだけだ。絶対に肩身が狭くなる、といって祐一さんは辞退した。

 部屋の掃除は完璧。なるべく部屋はいつも綺麗にしているが、お客さんが来るのだからいつも以上に気を使った。 真琴たちが来る丁度三十分前には掃除を含む全ての準備が終わった。後は来るのを待つだけだ。




 ドンドンドン


 戸を叩く音がした。真琴だろうか。家に入るときはインターホンを押してと言っているのに、なかなか守ってくれない。 最近は結構押してくれていたのだが、どうやら忘れてしまったようだ。それでもいきなり戸を開けない分だけましなのかもしれない。


 ガラガラガラ


 そうそう、こんな風に。
 ……って何をやっているんだろう真琴は。ちゃんと注意しないと。 部屋を出るとすぐにある階段の前で、私は注意の言葉を下に向けた。

「だめだよ、真琴。ちゃんとインターホンを押してから……」

 そこまで言いかけて考え直した。

 インターホンを押さず、なおかつ勝手に戸を開ける人。そんな事をするのは私が知る限り一人しかいない。

 私は階段を駆け下りた。
 会って話したいことはいっぱいある。新しく出来た友達のこと。学校生活のこと。真琴のこと。そんな話を して、最後には今の私は楽しんでいるよ、と言うのだ。だけど、その前に言う言葉がある。

 階段を降りた先には懐かしい顔。目の奥が熱くなっているのを感じる。駄目だ。泣いてはいけない。帰ってきた人を 迎えるときは、笑顔でいなきゃ。
 そう思い、私は目の奥の熱さを無理やり追いやる。そして、今では自然と出るようになった表情を正面へと向けた。

「おかえり」

 言った途端、私はものすごい勢いで抱きつかれ、後ろの方へのけぞるように倒された。